中部

寒暖差の大きい中部の山間は、旨い米に適しています。

また、水がいい地域の米は間違いがないです。中部の米は見逃せません。

 

【2019年 中部の特A受賞米】 👑

 

ハツシモ  岐阜

コシヒカリ 岐阜(美濃) 長野(北信・東信)

 


岐阜

「岐阜の新米は、でぇれぇうめーやろ!」


コシヒカリ9月中旬。特Aハツシモは10月上旬。


 

ハツシモは、幻の米といわれている。


始めて名前を聞いた方も多いのではないだろうか。


木曽川、長良川、揖斐川、木曽三川が流れる平坦地での栽培が適しているという。
泥っぽい土地が好きな稲なのかもしれない。


 

ハツシモのネーミングは、収穫が遅く11月の霜が降り始める頃、刈始めることからだ。

粒が大きく、粘りはあまりない。冷めても旨いことからお寿司屋さんが好んで使う米だ。


そう言えば、和歌山のキヌヒカリも、関西のお寿司屋さんに人気がある米である。
魚介類が好きな和歌山の人は分かる。

岐阜人は、どうなんだろう。


 

海津町(現在は、海津市)に、輪中の取材に行ったことがある。


カメラマンの宮地さんと二人で、3ヶ月位海津温泉に泊まっての取材であった。


どこまでも田んぼが広がる地域で、遠くの突き当たりに大抵、堤防の上で車が行き来するのが見える。


海津町は、堤防に囲まれた輪中の町なのだ。

「集落を水害から守るために周囲を囲んだ堤防」が輪中だ。


小学校で輪中を、僕たちは習う。

輪中の町は、低湿地である。川に囲まれているからだ。

ハツシモは栽培する土壌の好みが激しいらしく、泥っぽい海抜が低い土地が好きであるから、。

輪中の土地に、ぴったりなのだ。


居心地もいいのであろう。

 

海津温泉で取材をしていた時、食事が終わる頃には、辺りはシーンと静まり、もはや真夜中である。


タモリさんが、森田健作さんに夜9時に電話した時、


「なんだ、こんな夜中に!」

と、言われたことを面白おかしく話していたけど、海津町の夜9時はまさに夜中であった。

田舎の夜は、早いのだ。


 

旅館で、ナマズの蒲焼を出してくれたのを覚えている。

ナマズが名物料理なくらいだから、この辺りは沼地だったのだろう。

ハツシモは、そんな土地に適している。

 


旅館の夕食にケーキが出たことがあった。


「あれ、なんでケーキが出るの?」

と、カメラマンの宮地さんがおばさんに訊くと、


「今日はクリスマスです」

と、答えてくれた。


もはや、何月なのかも分からないくらい、ドップリ旅館暮らしである。

辺りにクリスマスらしいモノが何もないから、分からなかったのだ。

ハツシモは、寿司、カレーライス、丼、オムライスに向いている。


ナマズの蒲焼の下に敷かれていたのは、ことによるとハツシモだったのかもしれない。

ナマズは、うなぎより上品な味がすると、僕は思っている。

顔が、スゴイけどね。


次は、ハツシモを確認してナマズの蒲焼を食べてみたい。


オムライスもいいなぁ。

 

岐阜のコシヒカリは9月中旬。

 

文:紙本櫻士

 

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愛知

「でらうまゃぁー新米は、『あいちのかおり』だがね」

コシヒカリ8月下旬。あいちのかおり10月上旬。

 

名古屋めしにとって、米はチェイサーではないかと思うことがる。

ひつまぶし、味噌煮込みうどん、味噌カツ、手羽先、味噌おでんなど、名古屋めしは濃い味が多い。

濃い味でガツンと来るのが名古屋めしだ。

最初は、そうでもないけど、何度か食べると癖になる。

 

『あいちのかおり』の特徴を「香りがよく適度な甘さ」と説明しているのを見かける。

炊いた米をテイスティングすると、その通りなのだが、

名古屋の人たちは、あいちのかおりの『香り』より

「あっさりとクセがない」ところに、ひかれているのではないか。

 

例えば、和歌山のキヌヒカリは、冷めても甘く粘りも少ないから寿司に合う。

基本、和歌山の人はネタを乗せワサビ醤油でいただくのが好きなのだろう。たぶん。ネタとすし飯のハーモニーを楽しみたいのだ。

ところが、名古屋めしは、米がチェイサー

濃いウイスキーを飲むときの、美味しい水である。

ウィスキーの味を殺さない、水がいい。

 

熱々のご飯をおひつによそい、そこに濃い味のまむしを乗せる。

ご飯は、決してまむしの邪魔をしちゃいけない。

トンと膳に置かれたら、迷わずスッとお箸を入れて、ワシワシいただく。

ご飯に、汁が染み込みすぎてもいけない。あいちのかおりの粘り気も、ひつまぶしに丁度いい。

 

味噌煮込みうどんは、必ずしもご飯はいらないけど、あいちのかおりは丁度いい。濃い味を、ご飯がスッと戻してくれる。

ワインのテイスティングの口直しに、パンを一口いただくのに似ているかもしれない。

味噌おでんや、手羽先でも同じである。

ご飯をいただく度、濃い味が新鮮に楽しめる。

 

名古屋めしの小幸福である。

 

名古屋人にとって、米はなくてはならない名脇役なのではないか。

えーっと、僕、個人的な意見です。

 

コシヒカリは、8月下旬。

 

文:紙本櫻士

 

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静岡

「どえれぇ旨い新米があるら」

なつしずか8月上旬。コシヒカリ8月下旬。あいちのかおり10月上旬。

 

静岡人は、米が大好きである。
なにしろ、日本でトップクラスの米消費量県である。
うどん好きな香川や、米以外の選択肢が多い東京があまり米を食べないのは分かる。
静岡が、米が大好きな理由は謎なのだ。

お茶、うなぎなどは、ご飯と一緒に楽しむものは多いと思う。
しかし、浜松や藤枝、御殿場など、静岡へは何度も足を運んでいるけど、
特に、ご飯が好き!! というシーンにお目にかかったことはない。
ごく、普通にごはんを食べている。

掛川に友人がいる。
近年、彼に誘われて、掛川祭に遊びに行っている。
10月第2週に行われる、掛川の祭りである。

掛川の祭りにかける情熱はすごい!


掛川市の人たちが全員参加していると思われる41町の山車が出て、
朝から夜遅くまで4日、町を練り歩く。

牛車のような独特の二輪の山車で、山車が三味線と太鼓に合わせて踊るように動く。

動きがユーモラスで、見ていて楽しいのだ。
3年に一度、大祭があり、それはもう町をあげて大騒ぎなのだ。
祭りが終わると、街中がぐったりしているのではないかと思うくらい。

友人の川人さんが、掛川祭に合わせて月見の宴を企画している。
僕たちが開催している『千人の月見の宴』の掛川版である。
『千人の月見の宴』とは、淀川河川敷で開催している薪能と音楽の収穫祭である。
今年は、掛川で開催できたらと、たくらみ中なのだ。
基本、新穀を祝うイベントである。

米を日本一食べる、掛川ではやりがいがあると思っている。

余談だけど、建築家の津端修一さんの取材をしたことがある。
津端さんが亡くられてすいぶん経つが、とても素敵な生き様の方だった。
高度成長期の団地を設計した第一人者である。

彼の持論が面白い。
「一反の土地があれば、半自給自足が楽しめるんです。野菜、米、自分が食べるものを作って生きていくのは、みんなに勧めたい」と、彼は言う。


津端さんの家に行くと、畑が目の前に広がる。
太陽が注ぐ天井の高いリビングがあり、彼の仕事場と奥さんの作業場が機能的に配置されている。

壁にあるピアノの形をしたオブジェが目を引いた。
「家は、暮らしの宝石箱じゃないといけない」と、津端さんは言う。
一反の土地を持って、田んぼをやるのは、心惹かれるのだ。

大阪や東京など大都会では難しいけど、地方ではできそうである。
静岡はどうだろう。
都市でも郊外に行けば可能ではないか。
自分で収穫する喜びや、安心、災害にも強い生活が期待できそうだ。

田んぼを持つ生活ができたらいいなぁ。
引き続き、静岡の米好きの謎を追いたい。

なつしずかは8月上旬。

 

文:紙本櫻士

 

『人生フルーツ』予告編 津端修一
https://www.youtube.com/watch?v=YkTQVlA2KJ4

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山梨

「うんめぇっちゃ。山梨の新米は、うんめえな」

五百川8月下旬。コシヒカリ9月中旬。

 

山梨県西北部に位置する武川町に、幻の米がある。
農林48号で、通称がヨンパチだ。
『頭文字D』で、トヨタのAE86エンジンをハチロクと呼ぶのに似た、通の米である。
トヨタレビンとトレノに積んでいた、マニアックなエンジンの漫画だ。

あー昭和な漫画ですね。


幻のヨンパチは、病気に弱い。
水の管理も難しい。
それでも、頑固にヨンパチを作り続けている農家さんがいる。

美味しいからだと言う。

都内の高級寿司店が、香ばしさと味に注目したのが人気の始まりだ。
『横濱カレーミュージアム』でのコラボで、究極のカレーのご飯に使われたり『日本一美味しい米の秘密』(講談社)に掲載されるなど、一度はいただきたい米である。


「ヨンパチの真骨頂は、おにぎり」と、農家さんが言う。
新米が出たら、食べざるを得ないではないか!

とはいえ、農林48号は、全国で0.01パーセントしか作つけされていないという。

手に入れるのは、難しそうである。
武川米が手に入る『武川 米米まつり』では、都内からヨンパチを買いに来る車で大渋滞になるという。
これは米前線で、なんとか買えるようにしたい。
武川『月見むすび』は、素敵に美味しそうだ。

 

さて、
山梨では、超早場米の五百川に力を入れている。
なにしろ、8月に収穫できるからインパクトが大きい。
こちらもさっぱりとした味で、人気がある。
米前線的には、山梨がファールしているくらいの、早い収穫である。

山梨と言えば、果物だ。

ブドウや梨、さくらんぼとか。
米はというと、全国的にも生産量が少ない県だ。
全国で43位である。

とはいえ、旨い水で育った山梨の米は、格別だろう。
富士、南アルプス、八ヶ岳と、名水だらけではないか。

米が育った土地の水で、ごはんを炊くと旨い。
それに山梨の新米は、山梨の水でが、簡単にできそうである。
コンビニで手に入るから。

僕は、ヨンパチのおにぎりが食べたいなぁ。

文:紙本櫻士

 

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長野

「長野の新米、えれぇ旨いずら」

あきたこまち8月下旬。コシヒカリ9月中旬。

 

夏、涼しく、昼と夜の寒暖差が大きいと旨い米ができるという。

千曲川、木曽川、天竜川が流れる長野は、上流の贅沢な水を使って稲作ができる。

もっと、米どころになってもよいと思うのだが、全国では米の消費量が39位とふるわない。

 

ただ、田んぼの1aあたりの収穫量は、1位である。

沢山は作らないけど効率的な田んぼづくりが、長野の特徴だ。

 

長野には、蕎麦屋が多い。

なにしろ全国1位である。

讃岐に美味しいうどんがあるように、信州は蕎麦だ。

とはいえ、

「蕎麦なんて、白米が食べられない人が食べるもんずら」

と、おばぁさんが言ってたのを覚えている。

昔は、米が食べられないから蕎麦を食べていた。

今の蕎麦の印象とは、ずいぶん違っていたのだ。

 

田んぼは、肥沃な土が必要である。

山間に広がる長野の土地は、米作りの適さない土地が多い。

鹿児島のシラス台地のようにね。

信州蕎麦は、米の代わりだった。

 

小さな田んぼで米を効率的に作らなければならない。

長野の米作りは真剣勝負なのだ。今でも効率的に米を栽培している理由が、そこにあるのかもしれない。

 

例えば、信州ファーム荻原『浅間こし』は、100パーセント農薬、除草剤を使っていない。

50パーセント削減はあるけど、100パーセントはあまり見かけない。

大変だからである。

早場米あきたこまちを、頑張って8月に収穫するのも、米作りが大変な長野の工夫だと思う。

 

「米のECサイトは沢山あるし、一度買った米は、たいてい浮気をしないものさ」

と、知り合いに言われたことがある。

僕は違うと考えていて、おそらく浮気できなくしてる。

意図的な囲い込みである。

マネタイズというか…。

 

1980年代、インターネットが普及していない時代はパソコン通信が主流だった。

日商岩井と富士通が運営する『ニフティーサーブ』や、NECの『PC-VAN』などに入会し、会員同士がネットで交流するシステムだ。

会員数を誇る集団に属していると、情報も多いし楽しい。

当時、自社が運営するパソコン通信への激しい囲い込み合戦があった。

「パソコン通信は沢山あるし、一度入会した通信は、大抵浮気をしないものさ」

と、誰かが言ってたかもしれない。

 

ネットでの米サイトの囲い込みに似ている。

 

その後、インターネットの登場で囲い込みは消滅し、パソコン通信は淘汰された。

僕は、米前線で囲い込みのない未来をつくりたい。

日本地図を見て米の収穫時期を知り、注文できるシステムがあれば簡単に米を選べる。

好きな店を見つけるように、ネットで好きな田んぼを探す。

自由に、日本中の田んぼをめぐるのだ。

 

米前線で、自分が好きな新米をハシゴしたい。

ブランドより誰から買うか。

それを、米前線では探っていきたい。

 

長野の新米は、探りがいがありそうである。

マニアックな米や面白い農家が、ある。

長野の小さな田んぼも、面白そうだ。

 

早場米あきたこまちは8月下旬。

 

文:紙本櫻士

 

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事務局

株式会社 プレスト

 

〒573-0066

大阪府枚方市伊加賀西町57-4

mail:ohshi@shikon.meiji.ac.jp

概要

食と文化で、人を幸せにする会社

株式会社 プレスト

 

代表 紙本櫻士

ライター、コピーライター、アントレプレナー、小説家。日経新聞広告、エッセイ。

共同通信エッセイ。『川の水』(河川環境財団)『あまから手帳』(クリエテ関西)。『サライ』(小学館)などで執筆。交野新聞『僕の神さま』連載中。

SF小説連載『タイムハッカー』(A・ha)『日経新聞月間広告賞』『ノベルなび大賞 小林泰三賞』(『おっぱい』小説)  『僕の神様』(小説 交野新聞連載中)

川はともだち:代表 

薪能と音楽を楽しむ月見『千人の月見の宴』では、7000人を動員しました。

ブログ『起業でごはん!!』